

よく冷間鍛造(Forged)やアルミ合金といったワードを耳にしますが、
具体的にはどういった物なのでしょう?


超々ジュラルミン7075とは住友軽金属により開発された合金の一種です。
アルミニウムと亜鉛とマグネシウムによるアルミニウム合金で、高い強度を有しています。
航空機の機体やねじ等に多用されている軽くて強い、そしてしなやかさを持ち合わせている超高級素材。

常温で行う鍛造を冷間鍛造と呼びます。
冷間鍛造は常温の材料を高い圧力で加圧し、機械的性質を改善する製法です。
冷間鍛造は熱間鍛造に比べて精度の高いものを生産する事が可能ですが、
常温で鍛造する為数百トンもの大きな成形圧力を必要とします。
また、金型の設計が非常に難しく、高度な技術と経験が必要です。
ナットの形状に沿った繊維状のものをファイバーフロ-(繊維状金属組織)といい、 繊維に沿った方向は直角方向の2倍の強度を持つと言われています。
金属の塊から削り出した切削ナットの場合
切削ナットは、冷間鍛造製に比べて密度が低く、繊維も断絶しており、強度的にも劣ります。
削り出して製作をすると金属の持つファイバーフロー(繊維状金属組織)が途切れてしまい、
クラック等の原因を作ってしまいます。
クルーズの冷間鍛造ナットの場合

クルーズでは最も強くなり精度も高い 冷間鍛造法を採用しています。
ファイバーフローも途切れませんので クラック等も起こりにくい特性があります。
クルーズ・アルミ冷間鍛造ナットは アルミ合金7075にT6熱処理を加え、HRB値(硬さ試験による値)が90度〜95度と鉄製をも凌ぐ強度を得ています。
この高度な技術により、今までにない 精度と硬度に大変優れたホイールナットを生産する事が可能になりました。
HRB値比較
素材名 | HRB値 |
---|---|
7075冷間鍛造 | 90度〜95度 |
7075熱間鍛造 | 85度〜90度 |
6061 | 65度〜70度 |

ここで少しだけ、クルーズが冷間鍛造ホイールナットを開発したいきさつをお話ししましょう。
最初はサーキットで見た風景から始まりました。
あまりにも危険なホイールナット
私もたま〜にサーキット場に走りに行く事があります。
私はグリップ派なのですが、ドリフトクラスの走行を見学していると、
たまにホイールが取れてしまう車を見かけました。
原因はアルミ製のホイールナット・ハブボルト・ワイドトレッドスペーサーの破損でした。
ハブボルトの破損は恐らく金属疲労によるものだと思うのですが、
アルミ製のホイールナットとワイドトレッドスペーサーは材料強度の不足だと思われます。
破損したホイールナットは内側のネジ部分がバネの様に取れてしまっている状態・・・
あまりにも危険(汗
軽量でファッション性にも優れ、安心して使えるアルミ製ホイールナットができないだろうか?
軽量でファッション性にも優れるアルミ製ホイールナットを何とかして安心して使用出来る状態に
出来ないだろうか?
クルーズでは材料・製法から見直しました。
市販されているアルミ製ホイールナットを調べたところ、
2000番台・6000番台・7000番台の切削品・7000番台熱間鍛造品でした。
お客様の安全に直結する「強度」を最優先させて検討した結果、
7075超々ジュラルミンの冷間鍛造でした。
強い反面、加工性が宜しくなく高価、金型も高価
超々ジュラルミン7075は強い!のですが反面加工性が宜しくなく高価。
冷間鍛造の金型も高価(汗
しかし、企画当初よりゴールは
「安全に使用出来る高強度アルミ製ホイールナットを作る」
でしたので、迷わず選択しました。
また、サイズもHEX19mmのみとしました。
満足する強度を確保するのにHEX17mmでは厚みが足りなかった為です。
改良を重ねて解決!
金型も完成し、日本製の機械で250tの圧力を掛けて試作品を生産。
最初は材料の硬さゆえに割れてしまう等の問題も有りましたが、改良を重ねて解決。
試作品のトルクテストでも30kgf・m(294N・m)以上を達成。
そこまで締めると高い確率でハブボルトが折れますが・・・(笑